970705Requiem


事故の衝撃で歪んだエンブレム
97年7月5日朝5時42分ポルシェ911カレラ2が東北道下り線、花巻南IC手前約500m手前(475km付近)でクラッシュした。

前兆があった。

その時は横風がつよく、雨が降りだし路面は溜っていた埃や砂が濡れ始め、 滑りやすい状態だった。
そのため時速を約120Km/hに落とし、当たり前のように追越し車線を走っている と突然、車が左側へ平行に2m程流れた。

流れた原因は強い横風か、路面にハンドルがとられたのかは不明だが、 どうにか立ち直り、隣の走行車線に車がいなかった事に感謝した。

時速を100Km/hに落とし、今度は走行車線を走る事にした。
ルームミラーを見ると後輪が水煙を激しく巻き上げ後方の白いセダンが かすんで見えた。
運転手はかなり視界も悪くなってきたなと感じ、フォグランプのスイッチを 入れようと右手をハンドルから放した瞬間その悲劇は起きた。

荒れていた路面のためかハンドルをとられその瞬間、重たいリアが急激に前方に 流れだした。
必死にカウンターをあてたが、車は運転者の行動などまったく無視した。
右前方に約120度回転するように滑り、中央分離帯に吸い込まれていった。
次の瞬間、左フロントは大きな衝撃を受け、シートベルトは 乗客の腰と胸に食い込み、乗客が投げ出されるのを防ぎ、 その任務を遂行した。
左フロントに大きなダメージを受けた車は、 次に左リアを激しく分離帯のガードレールにヒットさせた。
その衝撃で左横方向に巨大なGがかかり運転者の頭は左ウインドに激しく叩きつけられた。

車は快適に東北道を疾走していた。たた深夜から走り続けていたため 眠らないように注意しようと思っていた。
快適なドライブだった。もう少しで青森だと思っているうちに
「私たち事故ったのよ、しっかりして。」という言葉で現実に引き戻された。
運転者は頭に衝撃をうけたため意識朦朧としていた。
ただクラッシュした現実だけは受け入れた。そのとき彼は「しまった、居眠り運転で事故ってしまった。」 と思い込んだ。


車は2車線のほぼ中央に無残に横たわった。
あたりには部品が散乱し、 エンジンから漏れたオイル、更に金属やプラスチックの摩擦で生じた特有の匂いが 漂っていた。
助手席のオーナーは冷静であった。衝突後、車がようやく停止してから 運転者が意識朦朧だと判断し、自ら緊急電話へと通報に路側帯を強い雨の中走った。
救急車で運ばれているうちに運転者は意識がはっきりしてきた。
居眠り運転ではなく、スリップによる単独事故だ。
横たわって鳴り響くサイレンを聞きながら、 他車を巻き込まなかった事と同乗者が皆、無事な事に感謝した。


事故直後の911(花巻南IC駐車場)

後日、このスリップは左リアのスローパンクチャーによるものだとわかった。
事故のアニメによる再現


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